ヒュー、ドドン。
「あそこまで行こうよ。」
海は前方に見える、少しここから離れた丘の上を指さす。
見たところ人は少ない。
「そうだな。」
じゃあ行くか。と手を引いた時だった。
「そこの二人!止まりなさい!」
ドクン、
遥の心臓が大きく跳ねる。
海には花火の音で聞こえていなかったらしく、遥を心配そうに見る。
「遥?」
「走れ!」
「え!?」
急に手を引き走り出す遥。
戸惑いながらも後に続く。
人の群れが進む方向とは逆方向へと進んでいく。
「待ちなさい!」
海は声に反応しばっと振り向いた。
警官数人が追いかけてきている。
大きく目を見開いた。
「な、なんで追われてるの!?」
「どうせ母さんか父さんが警察に連絡したんだろ!」
こんなに早く居場所がバレるとは思っていなかった。
遥は表情を歪める。
「きゃっ!」
「海!?」
何かに躓いた拍子に、海は体制を崩し転んだ。
その衝撃で手が離れてしまった。
遥は慌てて振り返り、海の姿を探す。
「海!」
人の群れですでに海の姿は見当たらない。
「はる、か」
必死で遥の名前を呼ぼうとするが、人に押し流されてうまく声が出せない。
「海!」
だんだんと遠くなっていく遥の声に、海は不安になった。


