「お、おばさん、遥は・・・?」

健二は躊躇いがちにそう問えば、母親は表情をゆがめる。

「もうすぐ、帰ってくるわよ。

ごめんねえ、学校休んじゃって。困った子達よね。」

「・・・どこかに、行ってるんですか?」

理子が母親に向かって口を開いた。

すると両手で顔をおおい、首を縦に振る。

「ご、ごめんなさい!

あの二人なら大丈夫だから気にしないでいてあげて!

折角来てくれたのにごめんなさいね。」

「い、いえ。」

「じゃあ、失礼するわね。」

「あのっ、」

ばたん、

母親は最後まで言葉を聞かずにドアを閉めた。

何かあったに違いない。

健二は確信する。

「・・・この家に、遥君と海がいる可能性は低そうね。」

「そうだな。」

明かりのついていない部屋を見上げて、つぶやく。

何処へ行ってしまったのだろう。

(遥、筧さん。)



昨日の事を思い出し、健二はため息をついた。

「なあ冬樹。」

「なんだよ。」

「どこ行ったんだと思う?」

「知らないよ。」

連絡つかないのにわかるわけない、と付け足すと

だよなあと健二は言う。

「・・・そんなに二人が気になるなら探しに行けばいいだろ。」

「どこを?」

「何処かを。」

どうせ明日学校休みだろ、と言うと健二はばっと立ち上がった。

「冬樹、明日付き合えよ!」

「・・・いいよ、どうせヒマだし。」

近所の人たちに聞きこむぞ、と意気込む健二に冬樹は困ったように笑った。