「どういう事よ!!」

翌朝、母親の大声が家中に響き渡った。

「少し落ち着こう、な?」

父親は必死で宥めようとするが、無意味だ。

「あたしのせいだわ・・・あたしが、っ・・・

家出なんて、嘘でしょうっ・・・

今すぐ警察に連絡を、」

母親が電話に手を伸ばす。

それを父親が止めた。

「何するのよあなた。」

「・・・もう少し、二人に時間をやろう。」

「え?」

思わぬ言葉に驚く。

「最後くらい、思い出を作らせてやろう。」

父親の表情は歪んでいた。

両親は、自分達の子供が愛し合っていることを知っている。

家出をした理由もわかっているはずだ。

「・・・。」

母親は力なく、電話に伸ばしていた手をおろした。

「二日だけよ。」

この家に戻ってくれば、

両想いでいることはできない。

否、両想いでいさせることはできない。


「ああ。」


学校に二日間休むことだけを連絡すると、

母親はぺたんとその場に座り込んだ。