「違うっ、」
「ならなんで!」
思わず声を張り上げた。
抱きしめる腕にさらに力がこもる。
「くるしいよ、遥。」
「行くなよ。
俺、もっと頑張るから。クラスの奴らになんて言われようと
お前の事ぜんぶ守るからっ、」
海は抱きしめ返したいのを堪えて、小さく笑った。
「遥は何も悪くないのよ。
私が全部駄目なの、心もちゃんと強くなって、
絶対に帰ってくるから。」
「・・・何、言ってんだよ。」
「このままの私じゃ、まわりを傷つけるだけなの。
遥も、お母さんも、冬樹くんも、みんなを傷つけることしかできない。
だから、自立して、つよく、なって・・・。」
自分でも何を言っているかわからなくなった。
海はポロポロと涙をこぼす。
「っ・・・」
遥は小さく、苦しそうにつぶやいた。
「俺も、行く。」
「駄目だよ。」
「なんでっ、」
「弟を連れていけない。」
海の発言に遥は目を見開いた。
弟、そう断言されたのだ。
「っ、なんだよ、ソレ。」
「遥は、幸せにならなきゃ駄目なんだよ。」
「なんだよそれ!意味わかんねーよ!」
彼女は涙で目元が赤く染まる。
声が震えて、言葉がうまくでてこない。
違う、こんなことがいいたいんじゃないのに
遥を想うと突き放す言葉しかでてこない。
冬樹は認めてくれた。
それが純粋にうれしかった。
けど、現実は甘くはいかない。
今の海にとって、自分の想いを認めてくれた冬樹がいただけで
満足だったのかもしれない。


