「好きでいて、いいと思う?」
『好きになるのに、理由はいらないでしょ。
いいんじゃないかな?
相手が誰であろうと、海ちゃんは好きなんだろ?』
冬樹の言葉は胸に広がる。
ぽたり、
彼女は静かに涙を流した。
冬樹にそう言われ、つっかえていた何かが取れたような気がした。
「うんっ、」
『なら、それでいいよ。
周りがなんて言おうと自分に正直になった方がいいよ。』
彼の声が震えて聞こえた。
きっと電話の向こうで泣いているのだろう。
「ありがとうっ、
ほんとに、ありがとう。」
『っ・・・じゃあ、そろそろ切るよ。
また、学校で。』
「うんっ・・・。」
ピ、と切られた通話。
海は携帯をじっと見て、そして涙を拭いて立ち上がる。
「・・・好きでいて、いいんだ。」
「当たり前だろ。」
ガチャリ、
「っ遥!?」
自分の一人事に返事がして、驚いて振り向けば
遥が立っていた。
遥は海の近くに置いてある大きな鞄を見て目を見開いたあとに
すぐに駆け寄る。
そして、彼女を強く抱きしめた。
「家出する気かよ。」
「・・・・。」
「俺が、海の事好きだから?」


