家族の誰にもバレないように、
衣類や私物を鞄に詰める。
♪~、♪~、
ふと、海の携帯が鳴った。
見れば冬樹からの着信。
ドクン、
震える手で携帯を持つと通話ボタンを押した。
「もしもし。」
『海ちゃん、久しぶり。今日話せなかったからさ、』
もう大丈夫?と自分の心配をしてきてくれる冬樹に涙が出そうになる。
「っ、大丈夫だよ。ありがとう冬樹君。」
どうして冬樹を好きになれなかったのだろう。
優しい彼と付き合えたなら、どれだけ周りは救われるのだろう。
無意識にそう考えてしまい、海は一人焦る。
『で、さっそくなんだけど海ちゃんは
双子の弟のことが好きなんだよね?』
「えっ、」
『違うの?今日学校で出回ってた噂は嘘?』
「・・・本当だよ。」
否定はしなかった。
海ははっきりとそう告げる。
『そっか、よかった。』
「ど、どういう意味・・・?」
『海ちゃんの口からそう聞けて、やっと諦められそうだから。』
少しだけ震えている声音に、海はつられて泣きそうになる。
「・・、ごめんなさい。」
『最初は、ただからかってやろうと思っただけなのに
気づいたら本気で好きになってたんだ・・・。』
「・・・冬樹君・・・。」
『でも、俺は海ちゃんの幸せを願うし?
遥と幸せにな。』
まさか応援されるとは思わなかった。
落としそうになった携帯をしっかりと持ちなおし、
海は口を開く。


