二人っきりになったリビングで、
どちらからともなく手を繋いだ。
「なあ、海。」
「なに?」
「俺は、好きになったこと後悔してないから。」
「・・・ありがとう。」
海は恥ずかしそうに、嬉しそうに微笑んだ。
「今日学校早退しちゃったし、入院してたのもあるから
私予習してくるね。」
「お、おう。」
勉強についていけなくなるのも嫌だし、と海は言う。
遥は納得して頷いた。
バタン、
海は自室に入ると扉を静かにしめる。
(これ以上、遥に迷惑はかけられない。)
優しい遥は自分を助けてくれる。
今日だって、隣の教室にまで来てくれた。
結果、彼まで陰口を言われるようになってしまった。
「っ、」
海は思い詰めたような表情で押入れを開けると
そこから旅行用の大きめの鞄をとりだした。
泣きそうになった。
けれど、今の海が考える精一杯の解決法だった。
好きだという気持ちは消すことができない。
それだと迷惑をかけてしまう。
なら、皆の目の前から消えるしかない。
(家出しよう。)
誰にも言わなかったが、
遥を好きだと自覚して、理子にいろいろ言われるようになってから
時々考える時があった。
(普通の双子の関係に戻れないのなら、・・・)
覚悟を決めた。


