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教師から許可をとり、
学校を早退するハメになる。
母親の車の中では沈黙が続いていた。
家につき、無言で降りると母親に言われてリビングに向かう。
ソファに座ると、母親は真剣な表情で口を開いた。
「まず、どうして遥は双子だということを隠そうと思ったの?」
自ら校長先生に頼みに行くなんて、と続ける。
遥はちらりと海を見てから、母親に視線をうつした。
「・・・別に、関係ないだろ。」
「その言い方はないでしょう!?」
いちいち母親に追及されるのが嫌だった。
海が隣で悲しそうな表情を見せているのが苦しかった。
母親はイジメを受けていたことを薄々とわかっていただけで、
何も知らない。
わかったような口を聞く母親に腹が立つ。
母親は呆れたようにため息をつくと、じゃあ質問を変えるわと言う。
「それに、あの携帯の写メ、嘘よね?黒板に書かれていたことも・・・
あなたたち、イジメられてるの?」
「・・・嘘に決まってるだろ。
俺と海が双子だってバレたから、からかわれてるんだよ。」
なるべく平常を保ち、遥はそう言った。
「っ・・・。」
海は泣きそうな表情を浮かべている。
それを見て、母親は何かを察したようだ。
一瞬表情をゆがめたが、悲しそうに笑って そう。 と一言答える。
「お母さんわね、あなたたちが心配だっただけなのよ。」
辛かったら、いいなさい。と言う。
「・・・さっきは、いきなり怒鳴ったりして悪かったわ。
二人にも二人なりの考えがあるものね。お母さんはいつでもあなた達二人の
味方だから。」
それだけ言うと母親は立ち上がり、買い物にいってくると告げる。
遥と海の中に、言いようのないモヤモヤとした気持ちが広がった。


