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「遥たち大丈夫かなー。」
場所は学校。
健二は机に頬杖を突きながら、冬樹につぶやいた。
「命に別状はないんだから、大丈夫だよ。」
一日に何回同じこと言えば気が済むんだよ、と呆れたように言った。
しかし、合宿で起きた事件を知っているのは剣道部とそのマネージャー、
そして教師達しか知らない。
公表にすれば騒ぎになると察したからだ。
「だって、気になるだろー。目の前であんな状況見ればさ。」
「・・・まあね。」
冬樹は気にしていないふりをして、内心は凄く心配をしていた。
見舞いにも何回か行ったが二人は目を覚ましていない。
「早く目を覚ませばいいけどな・・・。」
「川崎!冬樹くんっ!」
慌てた様子で教室に入ってきたのは理子だった。
「今先生に聞いたんだけど、二人が目を覚ましたらしいのよ!」
「マジかよ!」
「帰りに様子を見に行かない!?」
「おう!今日は丁度部活ないしな!」
冬樹も行こうぜ!と健二は声をかける。
彼は うん と頷いた。
「・・・あと、ね。」
「なんだ?」
急に声のトーンを落とし、深刻そうな表情をして理子は口を開いた。
「海ちゃんか遥君のどちらかが、別の教室に移動するって話・・・知ってる?」
「「は?」」
意味が分からないという表情を見せると、理子は身を乗り出し、小声で言った。
「さっき先生たちが校長と相談してるの聞いたのよ。
本当かわからないけど・・・あの二人、何かあるんじゃない?」
理子は双子だと知っているが、あえて自分からバラすような真似はしなかった。
「何かって、遠い親戚だろ?」
それ以外に何があるっていうんだよ、と健二は考える。
「わからないけど・・・調べてみる価値はありそうね。
急に教室移動だなんておかしいもの。」
「・・・俺も、調べてみるよ。」
冬樹は言った。
それを聞いていた健二が不満そうな表情を見せる。
「なんか、探るみたいで嫌だな。」


