「・・・遥?」

ザアアア、

一瞬、彼の声が聞こえたような気がした。

「どうした?健二。」

「今、遥の声が・・・。」

「本当か!?」

「っ!」

健二は走り出した。

先ほどの道に向かう。

自分でもどうしてかわからないが、こっちに遥がいる気がする。


ばしゃ、ばしゃ、

走りにくい地面を蹴り、親友を探す。

「遥ー!」

できるだけ大声で名前を呼んだ。

「健二!」

「冬樹っ・・・」

合宿所から少し遅れてきた冬樹が焦ったような表情で健二を見る。

「居たか?」

健二は首を横に振る。


「・・・健二、アレ。」

冬樹がふと視線を逸らし、まだ探していなかった森の奥の方を指さした。

「ずっと奥の木の下に、誰かいないか?」

「っ!」

聞き終わる前に走り出していた。

それに冬樹も続く。

焦りで手が汗ばむ。


近づくにつれ、だんだんとはっきりしてくる光景に息を飲んだ。

二人はぐったりしている。


「遥!!」

駆け寄り、健二は倒れている遥を揺する。

「遥!遥!」

「健二、俺はみんなに知らせてくる!」

冬樹はそういうと来た道を戻っていった。

「・・・っ、けん、じ」

「遥っ・・・。」

声にはなっていなかったが、一瞬遥が目を覚まし自分の名前をつぶやいた。