(健二だ、)
聞き覚えがある声に安心して、気を抜きそうになった。
しかし、まだ倒れるわけにはいかない。
「健二!」
喧嘩中の友人の名前を叫んだが、思ったより声がでない。
自分でも驚くくらいに声がかすれていた。
ザアアアア
雨の音で声がかき消されてしまう。
「遥!筧さんっ!居たら返事しろ!」
ここにいると叫びたかった。
しかし、どれだけ叫ぼうとしても届かない。
「こっちには居たか!?」
「・・・居ないみたいっス」
「っ、一体どこにいるんだ。」
「俺、向こうを探してきます!」
「ああ、俺も行く!」
だんだんと声が遠くなっていく。
急がなきゃ。ここにいることを伝えなきゃ。
走ろうとしてもうまく足に力が入らない。
体は雨で冷え切り、遥も限界だった。
(やばい、かすんできた・・・)
「ハァ、ハァ、」
遥は木の下まで移動すると立ち止り、呼吸を整える。
「はぁー、はぁー、」
(少し休憩しよう。)
海を降ろすと、遥はガクンと膝をついた。
(やっべ・・・)
体の力が抜けていく。
どさ、
彼はそのまま倒れ込んだ。
(・・・ゴメン、)


