(なんでこんなことになったのよっ・・・)
こんなつもりじゃなかった、と理子は目に涙を浮かべる。
(あたしのせいだ、あたしが、突き飛ばしたから。)
殺人未遂で捕まってしまうのだろうか。
そう考えると震えが止まらなくなる。
「理子ちゃん、」
「っ冬樹君・・・。」
全員が捜索しに行ってしまったと思っていた理子は
突然の声に顔をあげた。
「大丈夫だよ、きっと見つかる。」
「っ、そう、だよね・・・」
「そんなに思いつめた顔しなくても、二人なら生きてるよ。」
そういって笑顔を見せる冬樹に、理子は そうね と呟いた。
「じゃあ、俺も探しに行ってくるから。」
後はよろしくね、と理子に告げて道場を出ようとしたとき
ぐい、と引っ張られ冬樹は立ち止った。
「・・・理子ちゃん?」
「え、あ、ごめんなさい。」
自分でも無意識だったらしい。
冬樹の服を引っ張ってしまった事を後悔しながらすぐに手を離して
作り笑いを浮かべた。
「見つけてきてね」
「ああ。」
冬樹の目も海しか見ていない。
表には出さないが内心焦っているのだろう。
理子が手を離した瞬間走って行ってしまった。
*
「遥!遥ー!」
いち早く道場を出て、捜索に向かった健二は叫んだ。
ドクン、ドクンと心臓が鳴り焦る。
冷や汗が頬を伝い落ちた。
(喧嘩したまま別れるなんて、ぜってー嫌だ。)
今更になって後悔が彼の胸を締め付ける。
どうしてあの時、喧嘩なんてしてしまったんだろう。
「筧さん!遥!いたら返事しろ!」
ほかの部員も声をだして探している。
土砂降りの中、二人の捜索が始まった。


