「はぁ、はぁ。」
次第に荒くなっていく彼女の呼吸に、遥は不安になる。
このまま助けを待っていても、何時来てくれるかわからない。
「っ、」
遥はTシャツの上に来ていたジャージを脱ぐと、
それを自分が怪我をしている方の足にキツく巻きつけ、固定していく。
サポーター変わりにしようとしているのだろう。
「・・・は、るか?」
視界がぼんやりしてきた海は不思議そうに声をかけた。
「海、少し我慢してな。」
「ぇ、」
彼は立ち上がり、軽く足首をまわしてみた。
ズキ、
少し痛むが、歩けないほどではない。
固定されている為に歩きにくいが、やるしかない。
海の右手を掴み、自分の首にまわしそのまま背負う。
「は、るか・・・ダメ、だよ」
怪我してるのに、と言うが彼は聞かずに立ち上がると雨の中歩き出した。
なるべく濡れないように、木の下を歩いていく。
「早く上に戻らないと、風邪が悪化するだろ。」
「っ・・・。」
ああ、ダメだ。
遥に無理をしないでと言ったつもりだったが声になることはなかった。
次第に瞼が下がってくる。
「・・・ごめ、」
そのまま海は瞳を綴じ、意識を手放した。


