(・・・ちょっとだけ、様子見てくるかな)
「・・・なんか腹痛くなってきた。」
「は!?大丈夫かよ遥」
「あー・・・保健室行ってくる」
「うん、そうしたほうがいいよ。」
「野木には言っといてやるから。」
じゃ、行って来いよ。と健二は遥を見送ってから
体育の担当教師の野木の元へと向かった。
冬樹は遥が保健室へとは逆の方向へ行くのを不思議に思いながらも、
女子生徒がもってきたバレーボールを受け取り練習を始めた。
*
「・・・ハァ」
女子更衣室の前で、遥はため息をついた。
海の事を気にしないようにしようと考えれば考えるほど、
心配になる自分に呆れる。
(一年の時は違うクラスだったから、気にしなくてすんだのに。)
まわりに誰もいないことを確認してから、遥は更衣室のドアノブに手をかけた。
がちゃり、
「・・・海。」
「っ、う、ひっく・・・うぅ、」
中に入り、とりあえず内側から鍵をかけた。
海は泣きながら顔をあげ、遥だということを確認するとさらに大粒の涙を流す。
「う、うっ・・・遥っ君・・・。」
「その髪、どうしたんだよ」
「き、切られたっ、の・・・」
「お前・・・ちょっとは反抗したのか?」
「で、できなっ・・・」
次から次へとあふれてくる涙を見て、遥は彼女と同じ目線でしゃがむと
自分の体操服の袖でぐしぐしと涙を拭いてやる。
「ご、ごめっ・・・なさ、学校で、話さないって・・・。」
「もういいよ。」
遥はなんでもっと早く気付かなかったんだろうと後悔した。
見て見ぬふりをして、
自分が海と普通に会話をすることで周りに嫌われるんじゃないかと恐れて、
双子の姉の海を見捨てていた。
「ごめんな、海。」


