「遥!」
一人でぼうっと練習試合を見ていると八木に声をかけられた。
視線を向ければ、時計を気にしながら口を開く。
「どうせ暇だろう?」
「・・・。」
暇にさせてんのはどっちだ、と言いたくなったが堪え ハイ というと
八木は笑顔を浮かべる。
「洗濯を手伝ってきてやってくれないか?」
「え、」
「今マネージャーが一人で洗濯してるみたいだからな。」
「わかった。」
「敬語を使え。」
文句を言われながら、洗濯室へと向かう。
丁度ヒマだったし、何もせずに試合を見ているよりはいいと思った。
「あ、海。」
「っ///」
中庭で洗濯物を干している海を見て声をかければ
彼女は顔を真っ赤にして 遥、 とつぶやいた。
「俺、今日は見学だから手伝うよ。」
「い、いいの!?」
「うん。」
「ありがとう。」
嬉しそうに微笑めば、今度は遥が頬を真っ赤に染める。
(・・・可愛い///)
この時、二人は気づかなかった。
空がじわじわと曇ってきていることに。
「怪我してんだから、無理すんなよ。」
「遥こそ、無理しちゃだめだよ。」
海は左手、遥は足。
合宿にきて二人して怪我をするとは思っていなかった。
家に帰ったら親に説教をされるだろうな、とふと思った。
カゴに入っている衣類を手に取り、遥は干し始める。
そんな様子を、ドリンクを作り終えてたまたま近くを歩いていた理子が
見ていたことには気づかない。
「あーあ、なんでお前と双子なんだろ。」
双子じゃなければ何の遠慮もせずに海に想いを伝えられたのに。
「・・・でも、私は遥と家族でよかったって思うよ?」
家族じゃなきゃ、私の事なんて眼中にも入れてもらえなさそうだし、とつぶやく。


