「だとしたら?」
挑発的な笑みを浮かべる冬樹に、ドクン、と心臓が唸った。
「別に、ただ気になっただけ。」
「そう。でも、海ちゃんにはほかに好きな人がいるみたいだけどね。」
「・・・は?」
ただの俺のカンだけど。と続ける冬樹に遥は目を見開く。
(・・・ほかに?)
「告白したけど、返事はまだだし。
きっと俺はフラれるよ。」
遥には視線をうつさず、試合に目を向けたままさらりと言う。
「まだ、わかんねえだろ。」
「わかってるよ。」
「・・・じゃあ、海の好きな奴って誰なんだよ。」
「俺に聞くなよ。」
わかるだろ、と言われて遥は考える。
海は自分の事はきっと好きではない。
さっき聞いたとき、はっきりとそう聞いた。
冬樹でもないとしたら誰なんだろう。
「・・・もしかして、健二じゃあ・・・。」
「んなわけないだろ。遥って、馬鹿?」
「・・・どうせ馬鹿だよ。」
だってわかんねーもん、という遥の表情は沈んでいた。
彼は色々、いっぱいいっぱいなのだ。
何をどこから解決すればいいのかがわからない。
「まったく・・・。」
冬樹は記録を書き終えたのか、ペンを走らせるのを止めて
遥を見た。
「俺ははっきりフラれるまで諦めない。」
「な、なんだよ急に。」
「海ちゃんが遥を好きでも、まだ付き合ってるわけじゃないんだから
俺にもチャンスはあるでしょ。」
お互い正々堂々、頑張ろうね。と言い、冬樹は記録用紙を八木に渡すために背を向けて
歩き出す。
「お、おい!それってどういう意味だよ。」
冬樹の予想では、海が俺を好き?
ありえねえだろ、そんなの。
一人取り残された遥はぽかんとした表情を浮かべた。


