モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語







「遥、お前は見学してなさい。」

剣道場に向かった遥は、八木にそう言われたが

ただでさえ大会が近いために休むわけにもいかない。

「いや、俺はもう大丈夫だから練習に出る。」

「それで足が悪化したらどうするんだ。」

「俺の事なんだから、俺が決める。」

反抗的な発言に八木は呆れたような表情を見せた。

「いい加減に「別にいいんじゃないですかあ?」

様子を見ていた健二が、遥を見てそういう。

「本人が練習したいっていってんなら、勝手にさせとけば。」

「・・・。」

「ソイツの怪我が悪化したって、誰も困らないし?」

「健二!」

八木は健二に怒鳴る。

臆する様子も見せず、健二は素振りの練習に打ち込んでいた。

「健二と遥、喧嘩してんのか?」

「何かあったのかな?」

そんな様子を見てざわざわと騒ぎ出す部員達。

八木は大きなため息をついた。

「とにかく、今日は誰がなんと言おうと練習には出させないからな。

大人しく見学してるか、マネージャーの仕事でも手伝ってなさい。」

「・・・・ハイ。」

不服そうな表情を見せ、返事をした。

健二の視線が突き刺さるのを感じながら、剣道場の隅の方に座り込む。

「遥、大丈夫なの?」

記録係をしていた冬樹が彼に声をかけた。

「うん、なんとか。」

「そっか。よかった。」

冬樹は安心したような笑顔を見せる。


「・・・。」

「・・・。」

二人は沈黙した。


「・・・なあ、冬樹。」

「何?」

「海に告白したのか?」

彼にしか聞こえない声量で、そう問いかけた。