「っ・・・。」
遥は海の背中に手をまわし力を込める。
「海、冬樹と付き合ってんの?」
「つ、付き合ってないよ!それただの噂でっ・・・
遥こそ、理子ちゃんと付き合ってるんでしょ・・・だから、さっき・・・。」
「・・・違う。」
「え?」
遥は、ぽつりぽつりと真相を話し始めた。
*
一時間前。
イライラしながら遥は自室に入り、荷物を乱暴に置いた。
また健二と喧嘩をしてしまったことを少し後悔しながら、
まだ少し痛む足を我慢して剣道場へ向かおうとしたときだった。
コンコン、
「あいてる。」
突然のノックにそう返事をすれば、がちゃりと開いた。
「遥君・・・体、大丈夫?」
それは、心配そうな表情を見せた理子だった。
「・・・あ、うん。大丈夫。」
昨日、理子と色々あったことを思い出し少し気まずそうにそう返せば
彼女は よかった と微笑んだ。
「すっごく心配してたんだよ。」
「ありがと・・・でも、ほんとに大丈夫だから。」
「ほんとに?」
「?」
理子は遥に近づく。
「っあ!」
そして、わざとらしく彼女は躓いた。
体制を崩す理子に遥は驚き、咄嗟に支えようと手を伸ばした。
数人の足音が聞こえる。
それを感じとって、気づかれないように理子は笑った。
ぐい、
支えるために手を伸ばしてくれた遥の腕をぐい、と引っ張り
自分へと近づける。
「!?」
そしてそのまま、自分の顔を彼へと近づけ、
口づけた。
がちゃり、
丁度いいタイミングで後ろのドアが開いたのを聞き、
理子は遥を抱きしめようと手をまわした時だった。
「っ、は?」
「川崎君、どうした・・・の、」
聞きなれた二つの声と姿を見て、遥の表情がみるみるうちに変わっていく。
いきなりの事で理解できなかった現実が急速に脳の中に刻み込まれていく。
どんっ!
遥は理子を突き飛ばした。


