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「ねえ、さすがにあれはやばくない?」
「だよねー、いくら地味がキモイからってあそこまでする?」
更衣室での出来事を見ていた女子生徒たちが何やらひそひそと話していた。
冬樹と健二は気にしていないようで、バレーのチームの班編成に悩んでいるようだ。
「女子3人、男子3人で組めー。5分以内に決まらない場合は先生が勝手に決めるぞ!」
「遥くーん、冬樹くーん、ついでに健二。一緒に組まない?」
「ついでってなんだよ!」
「俺はいいよ。遥は?」
「あ、ああ、いいけど。」
「やったー、じゃ、決まりね!」
バレーボールとってくるね!と女子3人は行ってしまう。
「あはは、見た?地味の顔。」
「みたー、超キモかったよねー!」
遅れて海を苛めていた三人が体育館に来た。
遥は気にしないようとするのに、海が気になって仕方ない。
「うわ、また女子地味子になんかしたんじゃね?」
よくやるよなー、と健二が他人事のように言う。
冬樹は そうだね、 と笑った。
遥は彼の笑顔に違和感を覚える。
「冬樹、見にいかねーの?」
「遥、急に何を言い出すの」
「いや、朝だって挨拶してたし、見にいかないのかなと思って」
「ああ、あれね。ここだけの話、正直あんな子どうでもいいんだよね」
「え?」
「ああしたほうが、好感度いいだろ?一応俺、優しい好青年ってことでとおってるからさ」
「え?冬樹、まさか計算してたのかよっ!」
健二はすげー、と声をあげる。
「じゃなきゃあんな奴に声かけないよ。見るからに、気持ち悪いし。
俺が挨拶しただけであんなに嬉しそうな顔してたし、馬鹿だよね、筧さん。」
遥は無意識に拳を握りしめていた。
(尊敬した俺が、バカみてえじゃん)
こいつなら、海を助けてやってくれるとか、
こいつなら、海を変えてくれるとか、
一瞬でも思っていた自分が馬鹿らしくなった。
(俺も俺で、人のこと言えないけど・・・。)
昨日家で、楽しそうに三守のことを話していた海の表情が浮かんだ。


