だんだんとヒートアップしていく喧嘩に八木はため息をついた。

さすがの健二も怪我人に殴りかかりはしないだろう。


合宿所までもう少し。

八木はスピードを出した。










約10分後、合宿所についたときには口喧嘩は終わっていた。

しかし、険悪なムードが漂っている。

八木は本日二度目のため息をつき、ついたぞ と声をかけた。

健二は先に車から降り、遥を待たずにスタスタと歩いて行ってしまう。

遥も遥で、そんな健二を見て見ぬふりをして荷物を持つと

歩いていく。

「遥、手伝うぞ?」

「いい。」

八木の言葉にそっけなく返事をすると、荷物を部屋に置くために宿舎の方へ

歩いていった。

剣道場へ向かう部員達が遥を見て驚きの声をあげる。

「遥!お前もう大丈夫なのか!?」

「うん、なんとか。」

「あんまり無理すんなよー。」

遥は自然と笑顔になり、分かってるよと言葉を返す。



「あ、そういえば。」

部員が思い出したように遥に声をかけた。

「理子が言ってたんだけどさ、お前の親戚の臨時マネと冬樹が付き合うらしいぜ?」

「、は?」


いくらなんでも展開が早すぎる、と遥は思った。

「でも、二人とも美男美女だしお似合いだよな。」

「羨ましー!」

部員達の会話は遥の頭に届いていなかった。

いつかこうなると予測していたはずなのに、この気持ちはなんだろう。


「遥?」

彼の様子が可笑しいと感じた部員が声をかけるが、返事もせずに

部屋へ向かって歩き出した。