「ねえねえ、」
「な、何?」
「筧さんの事、海って呼んでいい?」
ダメ?と上目使いで見上げてくる彼女は誰が見ても可愛いと思う。
海は頬を赤くさせて、頷く。
「やった!あたしの事も理子って呼んで。」
「り、理子・・・ちゃん。」
「うん!改めてよろしくね。」
高校に入って、初めてできた女友達だった。
海は嬉しくて、少し恥ずかしくて、はにかんだ笑顔を見せることしかできない。
「ね、海は冬樹君にいつ返事するの?」
返事、と言われて戸惑った。
告白されたんだから、早めに返事をしなければならない。
(返事って?なんていえばいいの?)
私も、冬樹君が好きですと言えばいいの?
少し、心に引っ掛かる。
「どうしよう。」
「明日しちゃいなよ!あたしも明日するからさ。」
「理子ちゃんは、遥と付き合うの?」
「・・・うん、」
本当は付き合えるわけない。
しかし、うまく行けば海と冬樹が付き合い、
それで彼は海への想いをあきらめるはずだ。
そこを自分が狙えば・・・と考えていた。
「そうなんだ、両想いでよかったね。」
けれど、目の前の彼女は自分を何の疑いもせずに信じてくれた。
応援してくれた。
海は今の自分がどんな顔をしているかわかっているのだろうか。
泣きそうな、寂しそうな、無理やり笑顔を張り付けたような表情。
ズキン、
理子の良心が痛む。
けれど、
(あたしは負けたくない。)
遥を、手に入れたい。


