「ありがとう。」
理子は嬉しそうに微笑んだ。
ドクン、ドクン、
海の心臓の鼓動は、早くなっていく。
何に焦っているのかわからないが、不安になった。
「あたしも、冬樹君と筧さん、お似合いだと思うよ!」
「、え?」
「だって筧さん、こんなに可愛いんだもの。」
だからきっと、大丈夫よ。と笑う。
「・・・ありがと、けど・・・、私、自分の気持ちがわからなくて・・・」
「気づいたら、冬樹君の事考えてたりする?」
どうにかして、海の意識を冬樹に向けようと理子は考える。
「・・・気づいたらはないけど、いろいろ、思い出す時は、考えるかなあ。」
曖昧な返事に若干イライラしつつ、理子はさらに続けた。
「それって気になってる証拠だよ。
じゃあさ、冬樹君に彼女ができたら嫌?」
「え、」
そんなこと、考えたこともなかった。と海は思う。
嫌ではないが、少し寂しい気もする。
「嫌ではないよ。冬樹君が幸せになってくれるなら・・・少し、
寂しいかもしれないけど。」
「え!?」
彼女は大げさに反応して見せた。
それに驚き、海は目を見開く。
「寂しいってことは、筧さんは冬樹君の事が好きなんじゃない?」
「・・・そう、なの?」
「うん。ドキドキしたりするでしょ?」
少し考えて、確かに自分は冬樹に迫られたときにドキドキしたことを思い出す。
(恋?)
理子に洗脳されつつあることに気づかないまま、
海は鵜呑みにしてしまう。
「迫られたときは、する。」
「ほらぁっ!やっぱりそれって恋だよ!」
「そ、そうなんだ!」
(これが、恋なんだ。
遥も、佐々木さんに恋してるんだよね・・・)
自分の気持ちを理解できて嬉しい気持ちと、
遥と理子が両想いだと知ったショックが入り混じった。


