「す、好きな人!?」
「うん。動揺しすぎ。」
まったく、どこまで純粋なんだか、と心の中でつぶやいた。
海は先ほどの冬樹とのやり取りを思い出し顔を真っ赤に染め上げていく。
「え、何その反応。まさかいるの?」
「わ、わからないの。」
「わからない?」
「うん・・・あ、あの、ちょっと相談しても、いいかな?」
突然の言葉に、理子は驚きつつもうなづいた。
「さっきね、冬樹君に告白されたんだけど・・・
自分の気持ちがわからないの。だから、曖昧にしか返事ができなくて
でも、ギクシャクしちゃうのは嫌でっ・・・。」
理子は大きく目を見開いた。
それと同時に、チャンスだと思った。
自分の性格が相当歪んできているとなんとなく思ったが、
止められない。
「実は、あたしも言わなきゃいけないことがあって、」
「え?」
理子は少し頬を赤くさせ、恥ずかしそうに海を見た。
「さっきね、遥君に告白されたの。」
ドクン、
海の心臓が大きく高鳴った。
「え、」
言葉に詰まる。
「でも・・・あたしも遥君が好きだけど、ほら、部活とかあるじゃない?
だから、今、すごく悩んでて・・・。」
もちろん嘘だ。
しかし、海はそれを疑うことなく信じ込む。
「・・・っ、私は、佐々木さんと遥、お似合いだと思うな。」
最初の言葉を発するのに、勇気が必要だった。
冬樹の時とは違う、胸を締め付けるような痛みが海を襲う。
苦しくて、涙腺が緩んだ。


