それからは冬樹に頼りっぱなしだった。
自分もやると言っているのに、冬樹は無言の圧力をかけて
自分にやらせてくれない。
結局初日は、海はあまり働かずに終わってしまった。
「じゃ、部屋に戻るから。」
仕事を終えた冬樹はそっけなく海にそういうと、
さっさと部屋へ行ってしまう。
海の心にもやもやとした感情があふれた。
(私も部屋にいこ。)
なんだかんだ言って、結構疲れたのかもしれない。
一日が終わりほっとした瞬間、どっと疲れがでた。
ずきりと痛む腕を気にしないようにして部屋へ向かう。
「あ、筧さん!」
突然声をかけられ、振り向けば笑顔の理子がいた。
「佐々木さん・・・。」
「今日はありがとう。」
「ううん、全然っ・・・私、あんまり役にたたかなかったし。」
「全然そんなことないって!いてくれただけでもよかったよ!
あたしこそ、遥君に付き添っちゃってごめんね・・・
本当は、親戚の筧さんが行けばよかったのにね・・・。」
親戚、を強調していう理子に違和感を感じながら 気にしてないよ と笑った。
「あのさ、遥君の事で話したいことがあるんだけど。」
「え、何?」
「んー、ここじゃなんだし一緒にお風呂行かない?
露天風呂あるらしいから一度行ってみたくて!」
「う、うん。」
誰かと一緒に風呂に入る、という行為自体が初めてだった海は少し緊張した。
しかし、何よりも驚いたのは理子が自分と普通に会話をしてくれることだった。
そして、自分に話したいことがあるという彼女。
なんだか頼られている気がして、嬉しかった。


