「海ちゃん、俺は、」
言葉をつづけようとした瞬間、ガラリとドアの開く音がした。
「何してるんだ?お前ら。ドリンクはできたのか?」
病院から戻ってきた八木が不思議そうに問いかけた。
「「・・・。」」
二人は無言で離れ、残っている作業をこなしていく。
「早く頼んだぞ。」
「ハイ。」
急な顧問の登場に驚き、二人の間に沈黙が走る。
海の心臓はまだ落ち着いていなかった。
さっき、何を言いかけたのだろう?
冬樹は自分を好きだといってくれた。
返事をしなければいけないのに、自分ははっきりとした気持ちがわからない。
先ほどの事を思い出すだけで顔が真っ赤になる。
「俺がもっていくよ。」
「え、いいよ、私も、」
「怪我してるだろ。」
海が用意していたドリンクを大きめの板に乗せて冬樹は持ち上げた。
どうやら全部持って行ってくれるらしい。
「あ、ありがと。」
「うん。」
じゃ、また後で。と言い残し、冬樹は出て行った。
彼の表情が若干強張っていたのは気のせいではないだろう。
(・・・私のせいだ。)
このままギクシャクした関係になってしまうのは嫌だった。
どうにかしたいと海は考える。
(私は、)
冬樹君の事、どう思ってるんだろう。
自分の事なのに、分からない。
怪我をしていない方の手で、ぎゅ、とポケットのうえから携帯を握りしめた。
そういえば合宿の間は理子と同じ部屋だったことを思い出した。
(迷惑じゃなかったら、その時に、相談してみようかな・・・)
海には相談できるような女友達はいなかった。
会ったばかりで頼るのは少し気が引けたが、
海は理子になら相談できそうな気がして少しだけ心が軽くなった。


