コンコン、
しばらくして病室にナースが入ってきた。
「筧さん、一応今日は入院して安静にしててくださいね。」
「・・・はい。」
「学校の先生には、連絡を入れておきましたので。」
「あ、ありがとうございます!」
本来なら自分がしなければならないのに、ナースがやってくれていた。
理子はすかさず礼を言う。
「理子、もう合宿所に戻れよ。俺大丈夫だし。」
「そう?」
「うん。海と冬樹だけじゃ、大変だろうし。」
「・・・なら、あと少ししたら戻るね。」
理子は微笑み、遥を見る。
ふう、とため息をついた彼は困ったように笑った。
「おう。」
「何かありましたら、ナースコールのボタンを押してくださいね。」
ふふ、と微笑ましそうに笑うとナースは病室をでていった。
恋人同士だと勘違いしていたらしい。
初めは他愛ない会話をしていたが次第に会話は減り、沈黙する。
「・・・俺、眠いし少し寝る。」
眠たそうな声で、そう言った。
「わかった、おやすみ。私もそろそろ戻るね。」
「うん。」
理子はす、と立ち上がった。
遥はすでにベッドにもぐりこんでいて、目を綴じている。
「じゃあ、また明日。先生と迎えにくるわね。」
「・・・。」
返事はなかった。
「遥くん?」
静かに名前を呼ぶ。顔を覗き込めばすでに眠っていた。
あまりの眠りの速さに驚き、理子は小さく笑う。
「可愛いな、遥君。」
筧さんにはもったいない。と心の中で想う。
「・・・。」
そう思うと、頭にあることが浮かんだ。
「・・・。」
自然と、彼の唇に目がいく。
ドキドキと脈打つ心臓。よからぬ考えが理子に浮かんだ。


