痛むのか、後頭部をおさえながら上半身を起こす。
まだ寝てたほうがいいよ!という理子の声を無視し、遥は起き上がった。
「海は?無事なのか?」
自分の事よりも海の事を心配する彼に嫉妬した。
「遥君のおかげで、無傷よ。」
「そ、か。よかった。」
ふう、と安心したようにため息をついた。
「じゃあ、もう大丈夫だし合宿に戻るよ。」
「ダメよ。待ってて、今先生に連絡するから。」
理子の声を聞かずに、ベッドから降りて立ち上がろうとしたときだった。
ズキン、
「っ、」
足に激痛が走り、ぐらりと体制が崩れる。
「遥君!」
理子は慌てて彼を支えた。
「無理しちゃダメだよ。」
「無理してないよ。」
「してる!」
向きになって言い返す理子に多少驚きつつ、え?と聞き返す。
「全部、筧さんのせいなんでしょう!?」
「理子?」
声が震えている彼女を見て、目を見開く。
「今だって、合宿所に早く戻りたいのは筧さんの無事を確認したいからでしょう!?
でも、今遥君が怪我をしたのは筧さんのせいでもあるのよ!」
「り、理子?」
「なんで、あたしじゃダメなの?」
ひっく、と嗚咽をあげながら涙を流し始めた理子に戸惑う。
普段決して弱さを見せないマネージャーが人前で泣いたのは初めてだった。
「・・・海のせいじゃないよ。あれは事故だし。」
「っ・・・・、」
理子はこの時痛いほど感じた。
彼の中にあるのは筧海ただ一人だと。
自分に勝ち目はない、そう思った。


