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「・・・遥君。」
一方、病院の一室で理子はベッドで眠る遥を見つめていた。
「佐々木、あとは任せていいか?」
「はい。」
八木の言葉に理子は頷いた。
「頭から出血していたが、外傷はそれほどひどくなかったらしいし
他は捻挫と打撲だけで軽傷だから大丈夫だろう。医者もすぐに目を覚ますと言って
いたし。」
「・・・大丈夫だと、いいですけど。」
理子は心配そうな表情を見せる。
そんな彼女を見て八木は理子の肩を軽く叩いた。
「先生は合宿所に戻るよ。遥が目を覚ましたらすぐに連絡をくれ。」
「わかりました。」
八木がでていく。
シンと静まりかえる病室。
理子は膝の上でぎゅ、と拳を握った。
(まさか、こんなことになるなんて。)
少しの罪悪感が胸を締め付ける。
(いや、でも、筧さんの方が悪いわよね。)
自分が、壊れている自転車を海に教えたことを言うのが怖い。
責任を負いたくない。
しかし、海が余計なことを言えばバレるだろう。
(遥君が怪我するなんて・・・。)
「んっ・・・。」
「遥君!」
理子は遥に呼びかけた。
彼の瞳がゆっくりと開く。
「っ・・・、海?」
ぼんやりと、そうつぶやいた。
ズキン、と理子の胸が痛む。
「違うよ、理子だよ!」
「・・・理子、」
はっきりと目を開き、そしてまっすぐと彼女を見た。


