晴れ渡った空の下
雪乃は大きく毬を蹴りあげる


普通の貴族の姫たちなら
決してすることのない行動だが


雪乃が普通の姫とは違う事を
既に重々理解していた
クリスの宮の侍女や兵士たちは
特に気に留めることはない


「マリモっ!行け!」

雪乃の掛け声に
傍に控えていた若い獅子は
空高く飛び
蹴りあげた毬を見事にキャッチすると


俊敏な動きで雪乃の元にもどり
「褒めてほしい」
といわんばかりに
毬を雪乃に渡し胸を張った



「すごい!
上手くなったね。
これならもっと難しいのも出来るかも。」


マリモは強じんな足腰と
美しい肉体を備え
既に成獣と変わらない姿になっていた


獅子と聞くと皆おびえるが
しっかりと躾をされたマリモは
決して人間を襲うようなことはなく
忠実な番犬?になっていた


もちろん
雪乃の言う事は絶対で
宮にいるときは片時も傍を離れることはない