「…あ、のさ」

悠司が気まずそうに口をひらいた。

「ん?」

「俺の…親いたじゃん」

…えっ。
どうして今はいないみたいな言い方なの。

「3年前に…死んでさ…」

――…うそでしょ。
あんなに元気だったのに…どうして。

「俺ん家結構お金あってさ…遺産目当ての 人達たくさんいたんだ」

それって…――殺されたってこと?…

「その中に昔の知り合いとかもいて……
1番仲がよかった人に殺された」


心臓が止まるかと思った。
そんなに傷付いていたなんて知らなくて。

止まったばかりの涙は再び頬を伝う。

「それが俺の知らないところでならまだよかったのに……」

「っ」

「目の前で殺されたんだ…。
俺も殺されそうになって…それで、それで俺…」

「っもういいよ!!もういいよ悠司!!」

気づくと悠司を抱きしめていて、
その温もりにまた涙がでそうになった。

「…ごめん、辛いおもいさせてごめん」

悠司。
自分の方が辛いのに…。
本当にいつまでたっても優しすぎだよ。

「あのね悠司…。謝らなくていいんだよ。
それはいままで悠司が頑張った印」

――…気づいてたよ。
左の手首についた何個もの切り傷。