言い争いをしているうちに、

バレー部の人たちが戻ってきた。

なかなか岡森は来ない。

授業の始まりを告げるチャイムが鳴る

10秒くらい前にようやく岡森が来た。


「進之輔!」


岡森の変な名前を叫びながら一瞬後悔した。

1年の時はよく呼んでたのに、

今になるとすごく抵抗がある。

長い間、離れてたから。


本人に対して名前で呼んだのが

10ヶ月以上ぶりだったから、

振り向いてくれなかったらどうしよう

っていう不安があった。


呼んだ瞬間に振り向いてくれたのに、

呼んでから振り向くまでの

コンマ何秒の間にこんなに考えた。


「・・・ちょい来て」


渡そうとチョコを手に取った瞬間にチャイムが鳴った。


「・・・あ鳴った。」


この音で緊張が解けた。


「これはい。」

「あ、あざぁーす」

「ホワイトデー超期待してるから☆」


ただの言い訳にしか過ぎなかったけど、

その言い訳にウチは体力の大半を使った。

ただの言い訳だって解かってくれてるかなー…。


お返しなんて期待してない。

岡森にチョコを渡して、

少しの間だけでも

岡森の心の中にウチが居られる事。

それが最大の目的だった。


一応授業は始まってるから、

急いで教室に戻った。


もうこれで、岡森と極端に離れることは

無いって思って、すごく楽しかった。