学校帰りにやって来たのは、街中にあるそれなりに大きな映画館。
 券を見せて中に入り、食べ物を買った俺達は、前の方の席に並んで座って、映画が始まるのをまった。

「へへ、こうやって二人で映画見るのって何年ぶりだろうね?」

「ああ、そうだな。久々だ……」

 ポップコーン特大サイズを二人の席の中心に置き、それを摘まみながら俺達は話をする。

「覚えてる? 雫ったら、ホラー映画みてたら途中で、泣きだして、わたしに抱きついて来よね」

「……昔の事だ」

「あとあと、いっつも一番良い場面で、眠くなって、わたしがゆすってあげたりもしてたよね」

「ああ、そうだったな、はは……」

 けれど、俺は何も解からない。
 実質、俺の中で優美は2カ月前に知り合ったばかりなんだ。

「へへ、懐かしいね」
 
 でも、優美が楽しそうだから、話を合わせるしかない。

「あ、始まるよ!」

「ああ。……で、なんの映画なんだ?」

 ブザーが響くと同時に、暗くなり、大きなスクリーンに映像が映し出される。
 優美の昔話から解放され、俺はようやく一息つけると、溜息を吐き、ポップコーンを摘まみながら、映画が終わるまで、ずっとスクリーンを眺めている事にした。