落ち着かない部屋だ。
夜、俺は一人でベットに寝転がり「雫」の部屋を見回していた。
壁に貼られた意味不明なポスター、床に散乱した大量のマンガ、何台も出しっぱなしで放置しているテレビゲーム。机には、参考書一つ見当たらない。
そして壁に貼られた写真。優実や両親と一緒に写る……笑っている俺の姿。
この世に同じ顔の人間は三人居ると言うが、そんな人間が同じ学校に居たら気付かない訳がない。
変わっていたクラス、作った筈のない友達、死んだはずの両親。何かが違う……
考えれば考えるほど頭が混乱している俺の横で、家に帰って来た時から五月蠅く何度も鳴っていた携帯が……また鳴った。
ずっと無視をしていたが。ただでさえ解けない疑問に頭を抱えている今の状態に、その音は本当に苛立つものだった。
月森文歌。我慢しきれず携帯を開いた、着信中のディスプレイにそう表示されていた。
気は進まなかったが、このままではラチが空かないので仕方なく使い慣れていない携帯を耳に当て、通話ボタンを押した。
「何の用だ、俺はお前と話す事な……」
『大変よ雫っ!』
電話の向こうから聞こえてきたのは普通にして居たって五月蠅い文歌の更に五月蠅く叫ぶ声だった。
ただ……気のせいか鳴き声の様な気がした……
『優実が…優実が…っ!』
「優実?」
何だ、てっきり俺に対する文句でも言ってくるのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
『優実が…っ、さっきから電話に出なくて……おかしいと思って…探しに行ったら、変な連中に絡まれて――それで…それで……っ!』
電話の向こうで文歌は完全に泣きだした。あの気の強い女が泣くなんて想像も出来ないが……声は確かに泣いている。
「それで……何だ?」
『…っーー優実を助けてって言ってんのよッ!』

