学校に行く途中は昨日と同様、優実がいろいろと喋り掛けてくる。今日の朝見た占いの事、昼御飯の事、好きな音楽の事など絶えず話しかけてきた。
 正直……面倒くさかった。
 ようやく学校について、自分のクラスに入ると……

「おはよう、雫くん」

 教室の入り口で待ち伏せしていた見覚えのある女子が、思いっきりガンを飛ばしてきた。たしかコイツは……

「昨日の、平手女だな」

 そう言うと、何故か更にキツイ目つきになってコッチに近づいてくる。

「あんた……いい度胸してるじゃない!」

「いいから退けよ」

 今までの状況から推測して、平手女のいう「雫」も俺では無い「雫」なのだろう。

「し、雫! 文歌はね、昨日雫が居なくなったってのを聞いて、ずっと雫の事を探してくれてたんだよ!」

 横にいた優実が、俺と平手女の険悪な空気を察したのか間に入って止めようとしてくる。だが……そんなこと言われようと知らない奴には変わりない。
「俺は探してくれなんて、頼んだ覚えはない。お前が勝手にやった事を俺に押し付けるな!」

 この、今の俺の一言が完全に気に障ったらしく……

「…っ…人がどれだけ心配したと、思ってんのよッ!」

 平手女は大声で怒鳴りながら、俺の胸倉をつかんで来たのだ。

「放せ」

「嫌よ!」

 平手女が心配しているのは俺じゃ無い。その事を説明してもどうせまた怒る。いいかげんに俺は面倒臭くなっていた。

「ウザイんだよお前!」

「なっ…! アンタふざけ……」

「おいおい、何の騒ぎだお前ら!?」

 険悪な空気の中、HRをやりに入って来た担任教師により、俺たちは一言も話さないまま自分の席についてHRを始めた。
 このクラスでの俺の席は一番後ろの窓側。その隣には優実が座っていて…更にその隣にはあの平手 女、たしか文歌とか言っていたな。
 HRが終わって授業が始まっても、俺と文歌は一言もしゃべらず、間に座っていた優実は何やら俺達を仲直りさせようとしていたが……
 あの意味のわからない女と喋る気など俺には端から無かった。