何で、今更、あんな夢を見たのか?
 いや、夢に意味なんてないか。
 たとえどんな夢を見ても、所詮は夢でしかない。
 どうせ、目を開けた瞬間、いつもの見飽きた天井が見えて、また下らない毎日が続くだけ……
 そう、そのはずだった。目を開ける、その瞬間までは……

「……ん?」

 何か…違う?
 目に入るのは、淡い茶色の色……
 なんで、白い天井じゃない?
 違和感を抱きながら、起き上がり周りを見渡した時、ようやく気付いた。

「何処だ此処は!?」

 目に映ったのは、明らかに何時もと違う部屋の風景。
 無造作に散らかったマンガの山、やりっ放しのゲームの後。
 一体どうなっているのかと咄嗟にベットから飛び起き、外の風景を確かめようと窓を開けた……
 ――その時!

「雫ぅー、おっはよぉ~~っ!!」

 いきなり、俺と同じ高校の制服を着た女子が、隣の家の窓から俺の名前を呼び、この見た事のない部屋に飛び込んで来たのだ。
 隣に家?
 隣は空き地だったはず……
 いや、今はそんな事どうでもいい。
 それよりも……

「まったく、相変わらず雫の部屋は汚いなぁ~。この間、私が片づけてあげたばっかりでしょっ!」

 今の状況での最大の疑問。

「お前、誰だ?」

 それは、会った事も話した事もない女が図々しくもまるで昔からの馴染みであるかの様に俺に話しかけてくる事だった。
 いったい、どうして俺を知っているんだ?

「え~、雫何言ってんの? もしかして寝ぼけてる~?」

 どうやら、俺の質問がカラかっているように聞こえたようだ。
 意味のわからない女は俺の鼻をツンツンと突っついてくる……

「ふざけるな!」

 俺は目の前の手を払い、壁を思いっきり殴った!

「きゃあぁ!」

 俺を見て泣きそうになっている正体不明の女。
 それを無理やり窓から追い返しこの可笑しな状況を考える。