……また、これか。

「うわーん、お母さーん!」

 黒い服を着た大人たちの、前で泣いている子供……俺だ。

「……かわいそうにね、あんな小さい子がいるのに」

「あの子、一体誰が引き取るの?」

「親族の方達、皆して押し付け合いらしいわよ」

「無理もないわね……あの子、すごく病弱らしいじゃない」

「そうそう、死んだご両親も、ずっと心配して付きっきりだったしね。それなのに、こんな事になって……可哀そうに」

 聞こえてくる大人たちの噂話。

 ……もう、聞き飽きた。

「嫌だよ~~僕を一人にしないでよぉ~~~…お母さぁぁん!」

 幼く、小さな体で叫ぶ俺の声を、周りの大人たちは冷たく憐れんだ視線で見つめる。
 そうだよ、お前らは誰一人俺を救ってくれなかった。
 誰一人、辛かった俺を抱きしめてはくれなかった。