おばさんには全く見覚えが無い。
それでも……俺の事を知っていてくれた事がなんか無性に嬉しくて、店に入り、席に座っていた頃には俺の目に涙は無くなっていた。
「はい、おまたせ。おばさん特性のオムライスよ! 雫ちゃんの大好物だったでしょ!」
「ありがとう……おばさん」
大きなオムライス。てっぺんには旗が立ってて、子供みたいでちょっと恥ずかしいけど何か嬉しい。
「おいしい!」
この味……母さんの味じゃないのに……
なぜか、昔食べた事ある味だ。
「よかったわね。雫ちゃん、昔っからこれ食べると笑顔になってのよ」
「…そう……だったんだ」
洋膳屋のおばさんはそう言って「あはははっ」と店内中に響き渡る声で笑い、今度は力強く俺の頭を撫でた。
でも、そんな記憶、持ってない。
「もう大丈夫、雫ちゃん?」
「……うん」
「今は……一人なの?」
「……うん……」
「そっか。――寂しかったら何時でも来なさい。おばちゃん、雫ちゃんが来てくれたら何時でも特性オムライス作ってあげるから!」
「…っ……う…ん…っ…」
あれ、まただ……
おかしいな、また…涙が止まんない。

