ユメみる夢みる僕のキセキ

「し――ず……ぅ……」

 後ろから誰かが何かを叫びながらこっちに向かって全力で向かってくるのが見えた。
 顔は暗くてよく見えなかったが、辛うじて高校の制服を着ているのが解る。ただ、その制服はボロボロで、走る姿もどこかふら付いて弱々しい。
 まあ……別に関係ないか。
 向かってくる相手を気にせずそのまま歩きだそうとしたが……

「雫ぅー、待って!!」

 その声を聞いた瞬間、立ち止まり振り返った。その声は、朝からずっと聞いていた声だったからだ。

「……また……お前か?」

 今日、この意味のわからなくなった世界で、最初に出会った、あの女だ。

「もう……放っておいてくれ」

 息を切らし、泣きながら向かってくる姿に、俺は冷たく言い。振り返って歩き出そうとした……なのに……

「ばかぁーー、放って置けるわけないよっ!!」

 走って来たまま、あの女はいきなり抱きついて来て、俺はそのまま地面に押し倒されてしまった。 後ろ向きになった体で咄嗟に手をつき、頭を打つような事はなかったが……

「うわぁぁーーん~~~~っ!」

 俺の上で、ずっと胸に顔をうずめ泣いている奴がいた。退かそうとして肩を掴み無理やり引き離そうとするが、思いっ切りがっちりと抱きつかれていて一向に離れない。

「いい加減にしろ! 俺はお前の知ってる雫じゃねえ!」

 こいつが泣いている相手は自分ではなく、たぶんベンチの上で置きっ放しになっている携帯の持主の方だ。

「違うもん、雫は雫だもん! 雫のパパとママだってずっと心配して探してるんだからぁ!」

「……父さん…母さん? それは、朝あの家にいた連中の事か?」

「そうだよ、二人とも本当に心配してるんだから!」

「……そいつ等は…今、どこにいる?」

「え、今はきっと、家の近くを探してると……」

「俺をそこに連れて行け!」

 何を言ったって、この女は絶対に諦めはしない。
 なら、完全に違う人間であると証明してやる。