ユメみる夢みる僕のキセキ



 

 歩いた……ずっと歩いた。
 逃げたかった。この世界、自分を知っている奴、自分に構ってくる奴が居ない所まで。
 そう思って逃げていても、何時しか疲れ、暗くなり、街灯のついた公園のベンチの上で一人、俺は絶望するように座っていた。
 制服の内ポケットには、買った覚えのない携帯電話が何度も鳴っていた。
 ずっと無視をしていたが、ついに五月蠅くて我慢しきれずに、携帯を開いた。携帯のディスプレイには、着信30件とメール10件という文字が入っている。
 一体誰だ……?
 着信の履歴を見ると、そこには4人からの着信が繰り返し入っていた。その名前は、月森文歌(つきもり ふみか)、友岬優実(ともさき ゆうみ)……優実という名前には聞き覚えがある、たしか朝の平手女が言っていた名前だ。
 それと、残りの二人は……父さん、母さん。そう書かれていた。おそらくは、この携帯の持主の両親の事だろう。
 そしてメールには自分ではない「雫」という人物を心配したメール。

「はは……」

 あまりにも自分と違う環境にいる「雫」の事を考えると、おもわず虚しくて笑ってしまう。同じ名前の「雫」という奴は、ずいぶんと……愛されているんだな。

「……下らね……」

 そんな事を考える自分が、あまりにも馬鹿馬鹿(ばかばか)しく、惨めに見えた。
 別に……帰る場所がなくなろうと、世界が変わろうと、どうでも良かった。
 そうなっても、もとから一人っきりの俺には関係ない。
 これから、何処へ行こうか……。縁のある人間の居ない俺には行く宛(あて)がない。

「……腹減ったな……」

 何も食べて居ない。いつも制服に入っていた筈の財布も、今の俺の制服には入って居なかった。
 このまま、俺は死んでしまうのかな? 
 それなら……それでもいい……
 死んだら……父さんと母さんにも会えるしな……
 携帯を座っていたベンチに置き、俺はそのまま又宛てもなく歩こうと公園を出た。
 その時――