名札を外してICUへ。

何も変わってない。


「柚希…?聞こえる?」


何も反応がない。

ただ規則的に
機械で呼吸してるだけ。

また婦長に見つかって
追い出されるかもしれないけど、
少しでも傍にいたい。

ため息ついて椅子に座る。

白衣のポケットに手を入れる。

…ん?

指に外科用の糸が絡んだ。

いつか練習しようと思って、
余ったのを突っ込んでた。

忙しくて練習できなかったから
すっかり忘れてた。

何もすることなくなった今、
柚希の眠るベッド柵に糸をかける。

結ぶ。

更に結ぶ。

どんどん結び目が重なって、
太い糸になる。


何本も結んで
指が痛くなってきたころ。


「あっ!先生!
 こんなところで糸結びの
 練習しないでくださいよー;」


やっぱり追い出される。

オレ何やってんだろ…。



翌日も診療業務を外されて、
いろいろな雑務。

あとは論文を読む。

今度の勉強会で当番が当たってて、
最新の発表された論文を要約して
みんなに説明しなきゃならないんだ。

まずは日本語に訳すことから始める。

…あー、頭いてぇ。