【side律】

気付いてないわけじゃない。

気付かないふりをしていた。

柚希がだんだんと
疲れやすくなっていて、
時々発作が起きていることを。

「律~?勉強進んでる?」

「あぁ…うん」

今日は日曜日。

仕事が休みの柚希は
オレの家に来て、
自分の好きなように過ごしてる。

国家試験を前にしてるから、
かまってやれない
オレのせいだけど。

「お昼食べた?」

「や、まだ」

「何か作ってあげようか?」

柚希がニコニコしながら言う。

作りたいんだな…きっと。

でも、正直言うと、
じっとしてて欲しい。

「冷蔵庫、ホント何もないねぇ。
 何食べて生活してるの?」

「米があれば何とかなるよ?」

「えぇ~?国家試験までに
 体調崩したら大変だよ!」

そう言って、昼飯作る材料の
買い物に出かけようとする。

だから心配なんだって。

「えっ…律は勉強しててよ」

「いや、オレも行く」

「だーめー!
 いいから勉強してて!」

すぐ疲れるくせに、
そうやって頑張るんだ。

無事に買い物から帰ってきて、
小さなキッチンに立つ姿。

ホントは慣れないんだろ?

なのに、オレのために…。