「読んでみたくない?」



読みたくないと言えば嘘だ。

でも、上手く頷けない私に、環架はため息。



「お母さんからの、贈り物だよ?読まなきゃダメだよ!」



環架は「取って来る!」と、部屋を飛び出す。

私は慌てて追い掛ける。



「…颯太の部屋で読まない?」



―――怖いんだ、2人で読むのが。

でも、小説が私たちへの贈り物なら、きっと颯太たちも出るんだよ。

きっと、出て来る。



「良いよ!」



私は小説の原稿を手にする環架と佐和田家へ出向いた。

颯太は部屋でボーッと暇をもて余していて、私と環架のお願いを受けてくれた。