そういう訳で、この会社における「他人が小林を呼ぶときのルール」は確立しているのだが、メールの宛先入力の場面では、そんなに都合よくはいかないようだ。
オートコンプリートという機能をご存知だろうか。宛先の部分に「ko」と入力するだけで、コンピュータが勝手にその続きの綴りを推測してくれる機能のことで、「kobayashi」「komiyama」「kosakai」などの選択肢が出てくる。
この法則に基づくと、宛先の部分に「kobayashi」と入力した場合、「kobayashi_tomoko」「kobayashi_saburo」などの選択肢が出てくることになるが、厄介なことは、選択肢のトップに「kobayashi_isao」が表示されるのである。
選択肢の順番は、おそらくアルファベット順である。「tomoko」の「t」も、「saburo」の「s」も、確かに「isao」の「i」よりも後である。
しかし、ちょっと腑に落ちない。なぜ、この会社の小林には「ai」とか「eiji」とか普通にいそうな名前の人間がいないのだろうか。