…だが、結論から言うと、甘かったのはアーサーのほうだった。

 アーサーは決して弱くない。どころか、国内でもかなりの実力者だ。

 だが、エヴァの動きは予想外だった。油断がなかったとは言えないにしても。

 牽制のつもりの軽い打ち込み。エヴァは幅広の鍔で剣を払うのではなく搦め捕り、梃子の原理で剣を巻き込んだ。

 そして、鍔ぜり合いにこだわるでもなく、大きく身体をひねって懐へ飛び込む。

 斜め下から胸元へ伸びた剣先。ぎこちないが見事なものだ。初心者ならでは、というか、主流の剣術を学んだ者にはとても考えられない動きだった。


 エヴァは申し訳なさそうな顔をして、

「あのう…こんなのじゃだめでしょうか…」

 本気でわかっていない顔だった。

「…いえ、負けました」

「え、それじゃあ!」

「ええ。約束です。貴女に忠誠を誓います」

 その場でひざまずいて臣下の礼をとる。

 あわてふためくエヴァ。アーサーは冷徹に釘を刺した。

「ただし、私の主となるからには剣を修業していただく。…基本がなってない。叩きなおします」

「あ、はい!よろしくお願いします!」


 こうして勇者エヴァには従者がついた、のである。