「…後方からの援護が見込めなくなるぞ」

「シュリの力のほうがずっと強力です。…ですよね?」

「当然だな」

 エヴァの確認にシュリが答える。

 アーサーは頷いた。

「…実は俺もそれを考えた」

「えっじゃあ一緒に…」

「そんなことができるかと言ってるんだ!」

 叫んだ後で夜更けだったと思い出して後悔する。

 シュリが笑い出した。


「…とにかく!今日はもう寝ろ」

「えーっ」

「えーじゃない!」

「だってー、ちゃんと夜逃げの準備したんですよ?ほら!」

 エヴァがぱんぱんにふくらんだ鞄を示す。

 アーサーは頭痛がしてきた。

「…王都と連絡をとるから。さっさと寝ろ」

「…はあい」

 不承不承といった調子で頷く。


「おやすみなさい、従者さま」

 ふと思い出して部屋を出ようとする彼女を呼び止めた。

「…夕食のときに悩んでいたのはそれか」

「え?ええ」

「そうか」

 エヴァは首を傾げながら出ていった。


(心配していたなんて…言えるか!)