俺はちゃんと説明しただろう何を聞いていたんだ、ごめんなさい眠かったんです、というようなやり取りが続いたあと、アーサーは深いため息をついた。

「エヴァ様に期待した俺が馬鹿だった」

「従者さま、ため息つくと幸せが逃げちゃいますよー」

「誰のせいだ!」


「あああ!」

 エヴァが突然素っ頓狂な声をあげた。

「…何だ、俺はごまかされんぞ」

「ちがっ、ちがいます!あ、あそこ…!」

 エヴァの指す先には、

「くま?だけど大きいし、真っ黒…」

 小山のように大きな獣がいた。


 アーサーは舌打ちする。

 エヴァとの言い合いにかまけて気づくのが遅れた。

 不覚である。

 討伐隊員たちも徐々に獣の存在に気づいたようで、ざわめきが広まっている。

 距離があるとはいえこれではまずい。

 アーサーは声を張った。

「静まれ!」

 いきなりの大音声に、まわりの空気が張り詰めた。

「ここは都も近い。放置しておくと危険だ。討伐する!指示に従え!!」

 命令が行き渡るのを確認してから、アーサーはエヴァに向き直る。

 エヴァはまだ目を白黒させていた。

「見ていろエヴァ様、あれが魔物だ」