辻斬り

峰富寿湖(みねふじこ)。

年季の入った看板にそう書き込まれている。
「峰富寿湖……不治の者が沈み不死の者を生み出す、滅びと再生を永劫繰り返す場。人の道理ではもはや理解が出来ない」
「まさに神域、か――」
水面からは赤い霧が沸き、幻想的なたたずまいを見せている。が、そんな神秘など、この目の前の異形の前には迷惑なだけだ。
(まるで何かに誘われる感じがする。この景色は言うならまるで、生と死の境目――)
湖面は、闇の黒を残している。
やがてその黒い影に混じり合うように、人影が現れる。
それら、白い吐息を目や鼻、口や耳からだだ流しにして、よろめくように歩み寄る。
「こいつらどこから――」
考えるまもなく追いかけてくるのに気づくと、「逃げろ」と反射的に叫んでいた。
びしゃびしゃになりながら湖面を回り、自分たちを追い回すのがいったい何者かを探ろうとするが、この霧と暗がりの前ではまるで正体が掴めない。
そのときだ。