辻斬り

中には体中の削げ落ちた箇所からすっかり骨が剥き出ているものもいる。
(白骨化したものがないということは……)
おそらく完全に骨と化すまで、延々と獲物を捜し求めるのだと紀伊は推理した。それを思うと悲しくもありぞっとする。
今しがた死んだばかりの面々はこの霧の支配下に置かれ、鴻上たち、いわば生者を延々と襲うべくつけ狙う。
この村は、霧を介して私たちの体をのっとり人殺しを繰り返す――この霧こそ、呪いの賜物と思う。
(どうする? 朝が来たってこの霧は晴れそうにない)
午前四時を過ぎ、鴻上は慌しく頭を働かせる。
止まない眩暈と眠気に耐えながら、あゆみを連れて廃村の白壁を抜け、森を抜け、とにかく逃げた。
赤田だけならともかく、さっきまで一緒にしていた面々まで皆敵に回るなんて、旅は道連れとは言っても、あの世にまでご同行なんて真っ平ごめんだ。
(逃げるぞ! 今はとにかく!)
闇雲に森を抜けるうちに湖にたどり着く。