辻斬り

「……驚いたか? この霧は人にまとわり付いて、体が朽ちるまで獲物を追い続ける。果たされない恨みを晴らすためにな」
赤田は笑う。いや、赤田の体を借りた、辻霧鬼、そういうべきか。
鴻上はまとわり付こうとする霧を追い払う。
「だってその原因はあなたでしょ? あんたさえ死んでしまえば――」
「もお俺一人ジャすまないんダよ。みンな、ミんな死ンじゃワなきゃ、こノ恨みハよ……くうふぁ、くはははははああ……」
赤田はまるで怪電波に侵されたテレビジョンか、まさにこの世のものでない口ぶりであゆみに絶望を告げる。日本語のイントネーションも忘れたその姿は、はなはだ哀れとしか言いようがない。
やがてまた一人、また一人と霧中から湧き出る異形のものたち。
ぽっかりと開いた口からは霧状の煙が沸き、生気を失った肌は髪の色、陰影とまったく対照的な白色で見事なコントラストを描く。