†

赤田の陰湿な父親の語り口。乾いた声色で聞いたそれは、幼い赤田少年には永遠のトラウマとして残ったはずだ。
このように赤田は小さな頃からこの辻落しの話を聞かされていた。
そして、悪いことをすれば辻斬鬼が連れて行くという風にインプリントされている。いじめに遭い屈折した彼は自らが辻斬鬼になることで、最初いじめっ子への粛清を企てる。
赤田はただ単に復讐をせず、スラッシュメールという都市伝説を打ちたてた。赤田の事件がその逮捕をもって明らかになった後も、模倣者は後を絶たなかった。
人は人として理性を培いたゆまぬ努力を積み重ねてきた。
けれど人はそれでも欲を出し、いくさの末に獣になることを望み、獣になることで得てきたものもたくさんあった。この村の滅びはいわば、自然の摂理だ。